2.4 関数と関係子
2.4.1 絶対値
ある値zの絶対値はゼロからz までの距離を示すものです. 数値や数式の絶対値は縦棒を用いて
|z|のように記述します.
◮ 数式に絶対値の記号を付ける 1. 数式を選択します.
2. アイコン をクリックします. 絶対値記号を選択してOKボタンをクリックします. または
挿入+カッコとして絶対値の記号を選択してOKボタンをクリックします. または
キーボードからctrl+スペースバーとします.
◮ 絶対値を求める方法
1. 絶対値記号のついた数式にカーソルを配置します. 2. 計算コマンドを選択します.
◮ 計算
|−7|= 7 |−11.3|= 11.3 |43|= 43 |21−13|= 8 複素数の絶対値に関する詳細は38ページを参照してください.
2.4.2 最大値と最小値
maxとminはカッコ内に記述された複数の数値から最大値または最小値を見つける関数です.こ の時,カッコ内の値はコンマで区切ります. 関数maxとminは をクリックするか,または 挿入+数式名で表示されるダイアログを使って入力します. 数式モードから直接タイプ入力する こともできます. これ以外に,二項演算子の和∨または積∧の記号を使って最大値と最小値を求 めることもできます. 二項演算子は をクリックすると表示されます. 最大値または最小値 を求めるための式を記述したら をクリック,または計算コマンドを選択することによって目 的の値を見つけることができます.
◮ 計算
max(27,√
236,652,−14) = 652 27∨√
236∨652 ∨ −14 =652 max(
27,min(√
236,max(65
2,−14)))
= 27 27∨(√
236∧(65
2 ∨ −14))
= 27 min(27,√
236,652,−14) = −14 27∧√
236∧652 ∧ −14 =−14
max
1 3
−5 4
π 6
= 6 max
( 1 3 1/6 5
−5 4 π e2 )
=e2
有限区間内で最大値,最小値を見つける場合,関数maxやminのサブスクリプトに区間の開始値 と終了値を示す整数を記述します. たとえば1≤n≤10やk∈[1,10]とします.
◮ 計算
max1≤n≤10(sinn) = sin 8 mink∈[1,10](cosk) = cos 3 max1≤n≤10(sin 1.5n) = 0.997 49 mink∈[1,10](cos 2.6k) =−0.994 18
◮ 数値計算
max1≤n≤10(sinn) = 0.989 36 mink∈[1,10](cosk) =−0.989 99 max−2≤x≤2(
x3−6x+ 3)
= 8.0 mink∈[1,10](cos 2.6k) =−0.994 18
関数maxとminは区間内の整数変数に対する最大値と最小値を求める関数です. x∈[−2,2]と
−2≤x≤2は両方ともxが5個の整数変数 {−2,−1,0,1,2}をとることを意味しています. 上 に示した最大値を求める二番目の例題は関数x3−6x+ 3のx=−2,−1,0,1,2に対する値の内, 最大のものを求めるという問題です. 連続した関数x3−6x+ 3の最大値を求める問題ではありま せん.
2 1 0 - 1 - 2
7 .5
5
2 .5
0
- 2 .5
x y
x y
x3−6x+ 3
2 1 0 - 1 - 2
7 .5
5
2 .5
0
- 2 .5
x y
x y
x3−6x+ 3 x=−2,−1,0,1,2
2.4.3 最大と最小の整数を見つける関数
ある数値よりも小さいか等しい整数で,最大の整数を見つける関数をフロア関数と呼び,⌊z⌋と記 述します.
2.4 関数と関係子 33
◮ 数式にフロア関数のカッコを付ける
1. マウスをドラッグして数式を選択します.
2. アイコン をクリックするか,または挿入+ペアカッコを選択し,フロア関数のカッコ を選択し, OKをクリックします.
◮ 最大整数の検索
1. フロア関数のカッコを付けた数式にカーソルを配置します. 2. 計算コマンドを選択します.
◮ 計算
⌊5.6⌋= 5 ⌊−11.3⌋=−12 ⌊43
5
⌋= 8 ⌊π+e⌋= 5
これとは逆にある数値よりも大きいか等しい整数のうち,最小の整数を見つける関数をシーリング 関数と呼び,⌈z⌉と記述します.
◮ 数式にシーリング関数のカッコを付ける 1. マウスをドラッグして数式を選択します.
2. アイコン をクリックするか,または挿入+カッコを選択します. 3. シーリング関数のカッコ をクリックし, OKボタンをクリックします.
◮ 最小整数の検索
1. シーリング関数のカッコを付けた数式にカーソルを配置します. 2. 計算コマンドを選択します.
◮ 計算
⌈5.6⌉= 6 ⌈−11.3⌉=−11 ⌈43
5
⌉ = 9 ⌈π+e⌉= 6
フロア関数およびシーリング関数のカッコは特殊な区切り記号のパネル に用意されていま す.ただし,カッコがペア型になっていませんので注意してください.
2.4.4 相等チェック
相等チェックの結果は真,偽,と判定不可の3つです. 数式の等号をチェックした時に,その真偽が 決定できない場合があります. その場合には判定不可と表示されます. 計算エンジンは確率的な手 法を使って相等をチェックしますので,真と判定された式に僅かでも偽になる可能性が残されてい ると,これを決定することはできません. 実際にいくつかの数式については,この確率法で解決で きないものがあります.
相等チェックコマンドの利用方法
◮ 相等性をチェックする
1. カーソルを数式に配置します. 2. 相等チェックコマンドを選択します.
◮ 相等チェック
eiπ= −1は真 π= 3.14は偽 arcsin sinx=xは判定不可
2つの数値の非相等性をチェックする時に相等チェックの機能を利用します. 2つの数値の差を 表す式と,その差の絶対値を表す式が等しいという式をたて,カーソルを配置します. そして相等 チェックを選択します.
◮ 相等チェック
9 8−89 =¯
¯98−89¯
¯は真 πe−eπ =|πe−eπ|は偽 この結果 9
8−89 ≥0,または98 ≥89 であり,πe−eπ <0,またはπe< eπであることがわかりま した.
関数istrueを使って相等性をチェックする
数式モードでistrueと入力するか,または挿入+数式名ダイアログでこの関数を,新たな数式名 としてを入力します.
◮ 計算 istrue(9
8 <89)
=偽 istrue (πe< eπ) =真 istrue (2 + 2 = 4) =真 istrue((√
2)2
= 2)
=真 論理演算子を使って相等チェックを行なう
演算子∧(かつ)と∨(または)は論理演算子としての機能を持っています. 式α∧βはαとβが それぞれ真の時だけ真となります. 一方,式α∨βはαまたはβのどちらか一方が真であれば真 となります. 同語反復0 = 0や1 = 1を使って,もう一方の式の真偽を調べることができます.
◮ 計算 (56<65)
∧(1 = 1) =偽 ( 56>65)
∧(1 = 1) =真 (56>65)
∨(1 = 1) =真 (
56<65)
∨(1 = 1) =真 (1 = 1)∨(1 = 0) =真 (eπ=πe)∧(0 = 0) =偽 数値計算の機能で非相等であることをチェックする
数値によっては数値計算のコマンドを実行することによって,相等性をチェックできる場合があり ます.
◮ 数値計算
9
8 = 1.125 89 = 0.88889 よって 98 >89 πe= 22.459 eπ= 23.141 よってπe< eπ
2.5 複素数 35
2.4.5 和集合と共通部分
複数の集合の和集合を求める場合は記号∪で集合を結び計算コマンドを利用します.
◮ 計算
{1,2,3} ∪ {a, b, c}={1,2,3, a, b, c} {1,2,3} ∪ {3,5} ∪ {7}={1,2,3,5,7} {√2, π,3.9, r}
∪ {a, b, c}={
π, r, a, b, c,3.9,√ 2}
複数の集合の共通部分を求める場合は記号∩で集合を結び計算コマンドを利用します.
◮ 計算
{1,2,3} ∩ {2,4,6}={2} {a, b, c, d} ∩ {d, e, f}={d} {1,2,3} ∩ {a, b, c}=∅ {1,2,3} ∩ {}=∅
共通部分が無い時は空集合の記号である空のカッコ{}または,記号∅が表示されます. 逆に空集 合の記号∅を入力する場合はその他の記号アイコン をクリックしてパネルで目的の記号を 選択します.
集合の差を求める場合は, 2つの集合の間にバックスラッシュ\,または二項関係のパネルからマ イナス記号\を入力して,計算コマンドを実行します.
◮ 計算
{1,2,3,4} \ {2,4}={1,3} {a, b, c, d} \ {d, e, f}={a, b, c}
{1,2,3} \ {a, b, c}={1,2,3} {1,2,3} \ {1,2,3}=∅
ペアカッコを使ってグループ分けした集合の和,差,共通部分を求める場合は計算コマンドを実行 します.
◮ 計算
{1,2,3, c} ∩({2,4,6} ∪ {a, b, c}) ={2, c}
({1,2,3, c} ∩ {2,4,6})∪({1,2,3, c} ∩ {a, b, c}) ={2, c}
({2,4,6} ∪ {a, b, c})\ {2, a, b}={c,4,6}
2.5 複素数
実数aとbによるa+b√
−1という形式の数値を複素数と呼びます. 複素数の演算は実数の標準 的な計算規則と全く同じです. 複素数の場合,恒等式(√
−1)2
=−1が成り立ちます. 複素数は多 項式の解を求める場合に役立つという意味で考えられた数値です.
√−1はデフォルトではiと表記されます. この代りにj を利用する場合は,次の手順にしたがっ てデフォルト設定を変更します.
◮ すべての文書で
√−1の表記に jを利用する
1. ツールメニューから数式処理設定を選択し,一般タブを表示します.
2. 虚数単位の項目でiをjに変更するをチェックします. そしてOKボタンをクリックします.
この様に設定すると虚数単位はiでなくjで表示されます. 文章で虚数単位とは別の目的でiを 使うことができます.
グローバル設定を変更すること無く,ローカル設定のみを変更する場合は次のようにします.
◮ √
−1をjで表記するローカル設定の方法 1. 数式処理+設定から一般タブを表示します. 2. ローカル設定にチェックします.
3. 虚数単位でiをjに変更するにチェックして, OKボタンをクリックします.
2.5.1 基本操作
加算,減算,乗算,除算はどれも標準的な記述方法で数式を入力し,計算コマンドで計算を実行しま す.計算結果は実数aとbを使ってa+biやa+ibの形式で表示されます.
◮ 計算
(23−5i) + (1 + 16i) = 24 + 11i i 1 +i= 1
2+1 2i
(1 +i) (3−2i) = 5 +i i
1 +i 2 +i 3−i=12i 2.5 + 3i
3.59 + 16i = 0.21189−0.10871i (2 + 3i)÷(6i) = 12−13i
複雑 な 数 式 に 対 し て キ ー ボ ー ド コ マ ン ドctrl+y (文 字 送 り) を 実 行 す る と,ctrl +eや 計 算コマンドとは違った結果が出力されることがあります. ctrl + y は計算ステップをひとつし か実行しませんので,計算過程を示す場合に便利です.
2.5.2 複素数に対する実数の累乗とルート
複素数の指数計算を行なう場合は,一般的な累乗計算の場合と同じように式を記述します.
◮ 計算
i2=−1 (3 + 2i)−4=−28 561119 −28 561120 i √
−5 = i√ 5 (3 + 2i)4=−119 + 120i (
(3 + 2i)14)4
= 3 + 2i (2
5−34i)5
=113 221400 000+128 00043 737i (0.4−0.75i)5= 0.283 05 + 0.341 70i 式
(2
5−34i)5
と(0.4−0.75i)5の計算では答えが異なります. 式(2
5−34i)5
の計算結果がより正 確であり,式(0.4−0.75i)5の計算結果は有効数字5桁の近似値が算出されます.
◮ 数値計算 (2
5−34i)5
= 0.283 05 + 0.341 70i
◮ 計算
√(−2) (−3) =√
6 √
(−2)√
(−3) =−√ 2√
3 この場合,単純に√
a·b=√ a·√
bのように計算できません. この場合のエラーを回避するには, 最初に負数のルートを複素数として入力して計算します.
2.5 複素数 37
記号数の場合,求めたい計算結果が常に表示されるとは限りません. 例えば,√3
iを計算しようとす ると,√3
iが表示されます. 書換え+直交座標を使って,標準的な複素数の形式に書き換えます.
◮ 書換え+直交座標
√3
i=12√
3 +12i (8i)13 =12√ 3√3
8 +(1
2
√3
8) i
√2 + 3i=√
1 2
√13 + 1 +i√
1 2
√13−1
√a+ibのような直交座標の記号数を書き換えるには,初めに,記号aやbは実数として解釈する よう推定(実数)を実行します.
◮ 書換え+直交座標
√a+ib=√
1 2a+12√
a2+b2+i√
−12a+12√ a2+b2 (a+bi)−1= a
a2+b2 − b a2+b2i
負の実数の複素数根を求めるには,数値計算メニューまたはツールバーの数値計算ボタンを使い ます.
◮ 計算
√3
−27 =√3
−27 √3
−0.008 = 0.1 + 0.173 21i
◮ 数値計算
√3
−27 = 1.5 + 2.598 1i √3
−0.008 = 0.1 + 0.173 21i (−8)13= 1.0 + 1.732 1i √3
−8 = 1.0 + 1.732 1i
三角法を含む複素数の累乗のルートの計算に関しては,この章では記述していません. 複素数の累 乗やルートに関しては,36ページを参照してください.
2.5.3 複素数の実数部と虚数部
複素数の実数部と虚数部の値を個別に求める場合は関数ReとImを利用します. これらの関数を 数式モードで入力すると自動的に灰色で表示されます.
◮ 計算 Re
(2 + 3i 3−5i )
=−349 Im
(2 + 3i 3−5i )
=1934 Re
(3.6 + 6i 5−3.25i
)
=−4.2179×10−2 Re (a+bi
c+di )
= ac
c2+d2+ bd c2+d2
◮ 計算 2 + 3i
3−5i=−349 +1934i 3.6 + 6i
5−3.25i=−4.217 9×10−2+ 1.172 6i 指数形式の複素数の実数部と虚数部を分けるには,解を使います.
◮ 解
e3(x−5i)+2x=e5xe−15i
書換えを使って,標準形式の複素数の因数分解を計算する.